速読書評『On the Road』 | SP速読学院

速読ブックレビュー・書評

夏目インストラクター書評『On the Road』(英書)

On the Road (Penguin Modern Classics) (英書)

Jack Kerouac (著)
320ページ

安住に否を突きつけ、自由を夢見て終わらない旅に向かう若者たち。ビート・ジェネレーションの誕生を告げ、その後のあらゆる文化に決定的な影響を与えつづけた不滅の青春の書。

【読書の所要時間】 1時間10分(精読~熟読で1回)

ビート・ジェネレーションを代表する作家であるジャック・ケルアックのアメリカ大陸放浪の物語。
自身の体験を下敷きに書かれたもので、語り手のサル・パラダイスはケルアック自身、また主要な登場人物はケルアックの近しい友人がモデルになっている。(作家ウィリアム・バロウズ、詩人アレン・ギンズバーグetc.)
50年代に出版された本作。最近、フランシス・フォード・コッポラ製作・ウォルター・サレス監督によって映像化されたようだ。(映画の版権を早々と獲得していたコッポラが数十年来あたためていたもので、やっと気に入る脚本ができたようだ。)
当時は特にヒッピーから熱狂的に支持され、ボブ・ディランやジム・モリスンといったアーティストにも大いに影響を与えたという。

作家志望の青年サルは、破天荒なディーンと一緒にアメリカ大陸を横断していくのだが、道中で男に次のように尋ねられる。
“You boys going to get somewhere, or just going?” (何処かへ向かっている途中か、それとも、ただ移動しているだけか)
ふたりは、何故そのようなことを訊くのかとだけ返します。
すべての物事に輪郭とか何かしらの意味があるわけではないですよね。

ふたりは不即不離の関係で、全部で4回放浪するのだけれど、サルはディーンに嫌気がさして日常に戻っては彼のことが恋しくなり、ディーンのもとに回帰していく。
サルは、“白人の世界がくれるものはどんなにベストなものであっても充分なエクスタシーが得られない”と感じている。だから、ディーンのような“黒人性”を備えた刺激的な“他者”を求めてしまうのだろうか。
ディーンがサルに非日常を与えてくれる。ディーンとの放浪はサルにとってドラッグのような中毒性を孕んでいるのだろう。まさしく“トリップ”みたいなふたりの放浪。

新しい土地に、見慣れない顔。
“他者”を通して“主体”が浮き彫りになっていく。
大陸の果てに、人生のあらゆる局面が積み上げられる。
こういう怠惰な陶酔感のようなものが好きな方におすすめしたいです。

ディーンは常に“時間”に執着している。人生は有限だから、“いま”“ここ”を生きていたい。(おそらく)そのような思いから繰り出される“狂ったやつら”の愚行の数々。
ディーンはまちがいなく非遵法者だけれども、人間味にあふれていて、どうしても抗えない魅力がある。

ケルアックは、この作品を書くのに“3週間、ノンストップでタイプを打ち続けた”そうです。そのためか、読者に息継ぎさせないような流れる筆致で生命力や躍動感が感じられます。

小説の趣としては、自由奔放に生きることを賛美するというよりはむしろ、思い通りにならない人生の厳しさを強調する面のほうが多い気がします。
当時の文化や時代背景がうかがい知れる一冊。

これもおすすめ
 J・ケルアック 『地下街の人びと』
 W・バロウズ  『裸のランチ』
 A・ギンズバーグ 『吠える』

(夏目インストラクター 2013年1月)


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