社会人大学院生の方々に実際の速読トレーニングや活発な質疑応答を行い、読書速度のスピードアップを実感して頂きました。講座前の平均速度は分速735文字→講座後には1,680文字と、約2.3倍の伸びが見られました。
大阪経済大学大学院の速読授業の様子
2013年6月19日(水)、大阪経済大学大学院において、2時間半のSP式速読法授業を行いました。
参加者は太田一樹教授のマーケティング講座を受講されている社会人大学院生の方々を中心に、留学生の方も複数いらっしゃいました。
講義とトレーニングはSP速読学院 学院長の橘 遵が担当しました。学院長は2006年度より米大学BYUにて速読の授業も担当しています。
トレーニング中には参加者の方からの質問が度々あり、その都度丁寧に脳科学の理論を交えて回答していきました。
実際に読書速度も計測します。参加者の皆さんがそれぞれ持参した本を、1分間読んでいただきます。
トレーニングの前と後で計測を行いますが、読む場所は当然違う箇所になります。
また読み方は理解できる読み方で、トレーニング前後で理解度を変えずに計測するようお伝えしました。
留学生の方の伸び方に興味深いことがありました。
中国からの留学生の方には日本語検定試験で1級レベルの人が多いと伺っていました。その中に、読書速度がトレーニング後に6倍UPという顕著な伸びを示される方がおられました。
これほどの速度アップの理由は、日本語も中国語も漢字を使い、書き言葉として言語的に近いためでしょう。
英語圏の留学生の方の場合、アルファベットと漢字では言語的に大きく離れているため、日本語文章の初速度は200文字/分前後になりました。
500文字/分レベルに到達するにはトレーニングがもっと必要になるでしょう。
受講者の方の読書速度グラフ
受講者の方のトレーニング前後の読書速度変化グラフです。(数値は分速)
トレーニング前平均 735文字/分 → トレーニング後平均 1,680文字/分
伸び率平均 2.3倍
大阪経済大学授業 質疑応答
授業中は多くの質問が寄せられました。一部を抜粋してご紹介します。
質問1「専門書でも速読できますか?」
「専門書をすらすら読むためには、専門用語や概念知識、背景知識が必要になります。ゆっくり読んで理解できない本は速読でも理解できません。
初めて専門書を読む場合は、できる限り専門用語を除いた入門書、例えば新書などで概念知識をインプットしてから読むとわかりやすくなります。
専門書の内容をよくわかっている場合は当然速読ができます」
質問2「音声化するのはダメですか?」
「脳の中で音声化する場所はブローカー中枢とウェルニッケ中枢です。
ブローカー中枢は前頭葉にあり、口を動かすこと、唇や舌を動かすように命令します。唇読みの場合は分速400文字前後になり、速く読んでも分速600文字位です。
本を読む場合には、唇読みよりもそうでない方が理解しやすいのです。脳の中で情報処理を行うワーキングメモリーを余分に消費するからです。
ウェルニッケ中枢は頭の中で音として感じている場所です。速聴きで朗読文を聞くと、4倍速くらいから音がはっきりとつながらなくなり、つぶれてしまいます。音としてはっきりと聞こえるのは分速2,000文字位が限界です。
全ての文字を音声化すると分速2,000文字以上は難しくなります。速読はそれ以上の世界です。
実は分速3,000文字でもキーワードはほとんど音声化しています。ひらがなの音声化がなくなる感覚です。
分速5,000文字でも一部のキーワードは音声化しています。無理して音声化を取る必要はありません。
高速の文章を眺めていると、脳が高速化し、インターチェンジ効果で以前より楽に読めてきます。これを繰り返して行えば徐々に音声化が取れてきます。
もう一つはイメージを使う方法です。写真や絵はイメージで理解しています。音声化はしていません。これはイメージの回路を使っているのです」
質問3「精読と熟読は同じですか? どう違いますか?」
「精読はしっかりと理解して読んでいる状態です。
いっぽう熟読は、文章以外の部分で思考が働いている状態です。例えば問題の解答を考えている時間、小説なら感情移入している時間などです。
全体理解(あらすじ・あらましが取れている、文脈が理解できる読み方)が速くなると、精読のスピードも比例して速くなります。
熟読は文章の難易度によって精読との関係が変わります。文章が易しければ熟読は精読に近くなり、文章が難しければ精読から離れてきます。
本の内容によってこの三つの読み方を使い分けることが重要になります」
質問4「速読は定着化しますか?」
「定着化のためには分速3,000文字以上の速読が必要です。
私たちの住んでいる世界は音声の世界です。テレビ、会話など、音声化の世界にどっぷりと浸かっています。
頭の中に高速で処理できる回路を作る必要があります。車のレーサーは時速200km~300kmが日常世界で、時速100km台は遅く感じます。
その他にイメージの回路、パターン認識の回路など、別の回路を作ることも必要です。これは音声化と違う回路を使っているので、音声化に戻る影響を受けにくいのです」