速読ブックレビュー・書評

草野インストラクター書評『「やりがいのある仕事」という幻想』

「やりがいのある仕事」という幻想(朝日新聞出版)

森 博嗣 (著)
223ページ

人々は、仕事に人生の比重を置きすぎた。もっと自由に、もっと楽しく、もっと自分の思うように生きてみてもいいのではないだろうか。
成功するとはどういうことか? 良い人生とは? すり切れた心に刺さる画期的仕事論。人生を抜群に楽しむためのちょっとしたアドバイス。

【読書の所要時間】 1回目 20分(全体理解)、2回目 30分(精読)

著者の森博嗣さんは大学で勤務するかたわら賞を受賞し、作家デビュー。以降、小説からエッセイまで多数の著書を出版されており、47歳で大学を辞めたあとは、1日1時間だけ仕事という生活をされています。
 1日1時間の仕事で生活が成り立っている方は世の中あまりいませんが、その生活をされている森氏だからこその「仕事」に対する考え方が述べられている本です。

 就職活動に失敗し自ら命を絶つ者や、ブラック企業に勤めざるをえない者など、「仕事」というもので悩んでいる若者に対して「働くという行為がそんなに偉いことだとは考えていない」「働きたくなかったら、べつに働かなくてもいいんじゃないか」という立場で「人は働くために生きているのではない」と述べています。
 そもそも、就職しなければならない、というのも幻想だとしています。

「人は働くために生きてきたのではない。どちらかというと、働かない方が良い状態だ。」
「あらゆる面において、働かない方が人間的だといえる。」
 確かに、働かなくても生活ができるのであれば、働くことが楽しいと思う人は別として、ほとんどの人は働きたくないと思っているでしょう。ただ現実は働かなくては生活する為のお金が稼げません。
 その点においても働かない方が良い状態としている著者も述べています。
「ただ、一点だけ、お金が稼げないという問題があるだけである」
 まさにそこです。問題はただ一点だけなのです。

 また就職活動で求める要素として「やりがいのある仕事」ということがよく挙げられます。では「やりがい」とは一体何なのかに追求し、仕事といわず「人生のやりがい」については人から与えられるものではなく、自分で作るもの・育てるものとあります。

 就職について「自分の思ったとおりの就職ができなくても、全然悲観するようなことではない」とあるのですが、近年就職活動がより厳しくなっている中、自分の求める企業からなかなか内定をもらえず鬱病になる学生も増えてきています。自分自身を追い詰める前に、こういう考えもあるのだと知っていただければ、少し楽になるかもしれません。


 この本は、ビジネス書コーナーでよく目にする仕事の効率をあげる「仕事術」といった類の本ではなく、仕事が人生などと思う必要はないと述べている本です。
 やりがいを持って仕事をされている方など人によっては受け付けない方もおられるかもしれません。
 ただ、現在就活や仕事で煮詰まっている方などは、この本を読んで別の考え方を知ることにより、気が楽になる方もおられるかと思います。

(草野インストラクター 2013年8月)


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