速読理論 《文法をつかむ》プロセスの自動化

《文法をつかむ》プロセスの自動化

次の問題を解いてください。

[問題1]次の文章を読んで、品詞を分類しなさい。
【1】家の庭に、黄色いチューリップが咲いた。
【2】古いアルバムに、子供時代の自分を見つけた。


回答:【1】名詞(家、庭、チューリップ) 動詞(咲いた) 形容詞(黄色い) 助詞(の、に、が)
    【2】名詞(アルバム、子供、時代、自分) 動詞(見つけた) 形容詞(古い) 助詞(に、の、を)

 簡単な問題なので、拍子抜けしたかもしれません。ある程度、国語を学習した人なら、文章を一読するだけで品詞を分類することができます。
 文章読解のプロセスの中で、ほとんどの人が自動化しているのが文法的処理です。私たちは日本語で書かれた本を読むとき、いちいち品詞を確かめたりしません。そんなことを意識しなくても、文法がしっかり身についているからです。
 文法的処理が自動化していると、普通の文章を読むのには何の労力もいりません。自動化できないのは、難しい文章や、めちゃくちゃな構成の文章を読むときだけです。
 また、私たちは書かれている内容から、命題やテーマを予想しつつ文章を読みます。
 たとえば、次の文章を読んでください。

 夏休みの思い出といえば、何といっても昆虫採集だ。ぼくは毎年、夏になると、父や兄と一緒に森へ出かけた。目当てはカブトムシである。ぼくは昆虫の王様のカブトムシが大好きだった。
 カブトムシをつかまえるには、木の幹に砂糖水をぬるとよい。カブトムシは夜行性なので、暗くなるのを待つ。ぼくは胸をワクワクさせながら、砂糖水をぬった木の幹にカブトムシが寄ってくるのを待つ。
 ある日、ぼくはいつものように父と兄との三人で、森へ行った。木の幹に黒く光るカブトムシを見つけて、ぼくは「やったあ!」と声を上げた。父と兄も笑っていた。砂糖水をなめているカトブムシは、ぼくがこれまでに見た中で、一番大きかった。

 カブトムシの採集をテーマにした、作文の一部です。特に難しくない内容なので、すぐに読めたのではないでしょうか。
 この文章には一つだけ、ある仕掛けをしてあります。あなたは気づきましたか? 
 作文には「カブトムシ」という単語が七回出てきます。実は、最後の「カブトムシ」は、「カトブムシ」になっています。
 何も気づかず、「カトブムシ」を「カブトムシ」と読んだ人も多いでしょう。「カトブムシ」などという単語はありませんし、これまでずっと「カブトムシ」についての記述が続いていたからです。
 つまり、私たちは先入観を抱きつつ、文章を読んでいるのです。この先入観は、脳科学の専門用語で《プライミング記憶》と言います。プライミングとは、入れ知恵という意味です。
 もし、何の先入観もなしに一字ずつ文字を読んだなら、「カトブムシ」を「カブトムシ」と読み替えることはありません。
 一字一句、正確に読んでいく方法は、読み間違いをふせぐのに良い方法です。その反面、文章を読むのに時間がかかりすぎるという難点があります。
 文章をスラスラと読んで、すばやくテーマや内容を把握するために、プライミング記憶は重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

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