速読理論 《自動化》とはなにか

《自動化》とはなにか

 ここで《自動化》の意味を定義しておきましょう。
 《自動化》とは、「速く、正確で、ほとんど努力のいらない状態」との意味です。つまり、すばやく、かつ正確な処理を無意識で行っている状態を指します。
 自動化している処理の例を、いくつか挙げてみましょう。
 たとえば、パソコンのタッチ・タイピング。まるでピアノを弾くかのように、滑らかに文字入力できる人がいますね。指がキーの位置を憶えているので、いちいち目で確かめなくてもキーを打てるのです。これが《自動化》です。
 九九を読み上げるのも、自動化された処理の一つです。私たちは小学生の頃に、九九を暗記しました。憶えるときは大変ですが、いったん憶えてしまえば後は楽です。「8×4」との問題を出されても、当たり前のように「32」と答えが出せます。
 ピアニストや通訳、歌手やダンサーも、長年のトレーニングによって技術を自動化させています。これらは皆、くり返し訓練を積むことによって得た技術です。
 処理が自動化すると、時間の短縮ができます。昔は人間の手で行っていたものを、機械で自動的に行えるようになったもの、というように考えてください。
 あなたの家には、洗濯機や炊飯ジャーがあるでしょう。昔は、洗濯も炊飯も人間の手でしていたのです。人間と機械とを比べたら、後者のほうがずっと短時間で仕事ができます。
 また、私たちの日常生活においても、自動化された処理の例はあります。たとえば家族や友人と話すとき、特別な苦労を感じますか? 長年、日本語を母国語として使ってきた人なら、スラスラと言葉を発声できるでしょう。日本語の発声も自動化された処理の一例だと言えます。
 では、英語の場合ではどうですか? バイリンガルならともかく、たいていの人は英語を話すのに苦労します。英語を発音する処理が、自動化されていないからです。
 私たちが日本語を難なく話せるのは、子供のころからずっと訓練を積んできたからです。やっと言葉が話せるようになった幼児を観察してみると、よくわかります。幼児の発音はたどたどしく、大人と同じようには話せません。
 この差は、訓練の習熟度によるものです。私たちは日々の生活で、自然と日本語を話しています。その結果、唇や舌の動きを自動的にコントロールできるまでに、能力が向上したのです。
 これらの働きをつかさどっているのが、大脳の前頭葉にある《ブローカ中枢》です。
 発見者はフランスの外科医P・ブローカです。言葉を話したり書いたりすることを支配する器官で、ここに障害があると失語症になります。
 正常な人間の脳のブローカ中枢に電気的な刺激を与えると、それまで普通に会話をしていた人でも急に言葉がとぎれたり、もつれたりするようになります。ブローカ中枢のコントロールが乱れ、自動化の流れがストップするからです。
 ワーキング・メモリの役割は、情報の処理や保存、管理および実行です。少ない容量をやりくりしつつ、ワーキング・メモリはこれらの作業を行っています。
 また、文章読解に限らず、友人との会話や庖での買い物など、ワーキング・メモリの活躍は広い範囲にわたります。ワーキング・メモリは、常にフル回転しているのです。

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