速読書評『秘密結社にご注意を』

吉田インストラクター書評『秘密結社にご注意を』

秘密結社にご注意を(宝島社) 秘密結社にご注意を(宝島社)

新藤 卓広 (著)
345ページ

会社をクビになった青野が再就職したのは…なんと、秘密結社!? それぞれの事件がひとつにつながり、そして―。選考委員絶賛のユーモア・ミステリー。第11回『このミス』大賞優秀賞受賞作。

【読書の所要時間】 45分(精読で1回)

この本はまずタイトルが目を引く。秘密結社、と言われて興味をそそられる人は少なくないだろうし、私もそうして手に取った1人である。が、この物語の舞台となるそれは、決して犯罪の香りがする闇組織でも世界的権威の歴史ある組織でもない。

 “清掃会社”が表向きの秘密結社に再就職することになった、ある悪癖のせいで前職をクビになった青年、青野恵介。新しい仕事の内容は、街歩きや人間観察等といった何とも平和で意味不明なもの。数少ない同僚も自身の悪癖のため社会からはじかれた変わり者ばかり。組織の存在意義、仕組み、構成要素全てが怪しく謎。
 そんな突っ込み所満載の、青野の奮闘話を主軸に複数の事件が同時進行し、次第に絡み合っていく。

 正直読後は大長編原作の2時間ドラマを見ているような… 少々物足りない感が残った。登場人物が多いのが起因してか、前半は予想以上に視点が入れ替わり立ち代りで、後半からの怒涛の事件展開… と全体像やリズムがつかみにくく、やや散漫な印象を受ける。
 しかし、1人1人が持つ悪癖が思わぬところで上手く重なっていく様は読んでいて面白く、人の長所短所はまさに表裏一体だと再確認させられる。彼らの行動は極端だが、大なり小なり己の短所をその特性によって役立たせることもできるという前向きさは大事にしたいものだ。
 また題材や登場人物のユニークさ、散りばめられた伏線、小気味よく軽妙な描写は魅力的なので、繰り返し読みたくなる楽しみもある。
シリーズ化も匂わせる? この処女作から、二十代という若い著者への今後に期待してみたい。

(吉田インストラクター 2013年8月)


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