速読書評『iPS細胞とはなにか』

山口インストラクター書評『iPS細胞とはなにか―万能細胞研究の現在』

iPS細胞とはなにか―万能細胞研究の現在 (ブルーバックス) iPS細胞とはなにか―万能細胞研究の現在 (ブルーバックス)

朝日新聞大阪本社科学医療グループ (著)
176ページ

人体のどんな組織や臓器をも作り出すことができる万能細胞の実現は、医療に革命をもたらすと期待されている。iPS細胞の発見は、その扉を大きく開いた。
しかし同時にそれは、世界規模の研究競争の幕開けでもあった。山中伸弥教授のiPS細胞を中心に、世界の万能細胞研究の現在を見る。

【読書の所要時間】 35分(精読で1回)

この本を読んでみたいと思ったきっかけは2012年に山本伸也教授(京都大学)がノーベル医学生理学賞を受賞したことです。
恥ずかしい話ですが山本教授がノーベル賞を受賞されるまで私はiPS細胞という名前を聞いたことがありませんでした。それで今回の読書を通してもっと知識を広げていきたいと感じています。

そもそもiPS細胞というのは人口多能性幹細胞のことです。1人の人間を構成している細胞の数は60兆という途方もない数の細胞です。最初は1個受精卵からはじまります。
細胞にはそれぞれ役割分担が決まっていますが、細胞の役割を変えることはできません。しかしiPS細胞の登場によって病気の治療に革新的な技術をもたらすことができると期待されています。

iPS細胞の研究をしている科学者の方は世界中に大勢いらっしゃいます。なぜ山本教授がノーベル賞を受賞できたのでしょうか? それは山本教授がたった4種類の遺伝子を導入するだけでiPS細胞の仕組みを解明することができたからです。
山中教授の研究の転機になったのはカリフォルニア大学サンフランシスコ校への留学危険です。日本人はハードワークですがビジョンが苦手です。アメリカ人はハードワークが苦手でもビジョンが素晴らしいのです。私もアメリカで留学した経験があり、実際にそう感じました。

私が本を読んでいて面白いなと感じたところは、科学の進歩が宗教と政治に大きく関係しているということでした。生命倫理的な面からみると人の命が実験や研究によって大切に扱われているのかということに論点があります。宗教的に反対の立場をとる方たちもいますが、政治的に反対の立場をとる方たちもいます。iSP細胞はその点では受精卵でない細胞から万能細胞を作り出すことができるのでローマ法王庁も「人(受精卵)を殺さず、たくさんの病気を治すことにつながる重要な発見だ」とコメントされています。

本書の中には特許(知的財産)についても数多く言及してあり非常に勉強になりました。特許と言えばビジネスやIT関係に関することだと思っていたのですが、医療機関の中においても数多くの特許が存在しています。iPS細胞の研究で成果を挙げた山中教授ですが、他の国で特許を申請される可能性もあります。そうなると他の国でしか治療を受けられなくなってしまったり、高額な医療費が請求されてしまったりします。

人々の関心、国の関心が医療機関にもっと注がれる必要があるのだと感じました。事実アメリカ、欧州、中国ではiPS細胞を取り扱う医療機関に対して莫大の資金を投入しています。そういった意味では日本はまだまだ出遅れているのではないかと思われます。この本を読むことによって知らなかった事柄をよく学ぶことができました。それと同時にこれからのiPS細胞の研究を楽しみにしています。

(山口インストラクター 2012年12月)


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