速読ブックレビュー・書評

佐野インストラクター書評『The Long Goodbye』

The Long Goodbye (早川書房) The Long Goodbye (早川書房)

レイモンド・チャンドラー (著), 村上春樹 (翻訳)
711ページ

テリー・レノックスとの最初の出会いは、「ダンサーズ」のテラスの外だった。ロールズロイス・シルバー・レイスの車中で、彼は酔いつぶれていた。
村上春樹の新訳で読書界の話題をさらった永遠の名作。

【読書の所要時間】 50分(精読で1回)

主人公である私立探偵フィリップ・マーロウと、億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスとの出会いは、“ダンサーズ”という店のテラスだった。酔いつぶれていたテリーを介抱し、以来、杯を交わす仲になる二人。このテリーが、初めのうちは意味深でつかみどころのない人物なのですが、二人は互いの魅力に惹かれあい、友情を深めていくことになります。友情の描写もとてもハードボイルドで、現代の感覚からすると異質に感じるため、目が離せません。けれども、あまりにも早い段階でテリーがいなくなってしまいます。ある日、テリーの妻が殺害され、妻殺しの容疑をかけられたテリーは行方をくらまし、数日後ホテルで彼の遺体が見つかります…。
 『長いお別れ』というタイトルで過去に翻訳された本の軽装版。新訳として出版されたものですが、現代的かというとそうでもありませんでした。むしろ登場人物のほとんどに、かっこつけやがって! と突っ込みを入れたくなる。マーロウが取り調べを受けた警察にいちゃもんつけたり、静かに殴りあったり…。清水俊二による訳を読まずに思うのは、この本の底流に流れているハードボイルドな雰囲気は、村上春樹の著作のそれと同じか、非常に近いものであるということ。主人公は口癖のように「やれやれ」と言ったり、タフネス(と言うべきなのか頑固と言うべきなのか…)を発揮したり。そういった点で、好き嫌いははっきりと分かれる本なのかもしれません。しかし、不思議なことにこの少しいらつく文章と、本書の雰囲気は非常にマッチしているようにも思えてしまう。そう思えたら、たっぷり楽しめる本だと思います。主人公がテリーに同情を覚えてしまうのもわかります。飲んだくれ、他人に迷惑をかけるようなだらしのないテリーに何故か魅力を感じてしまい、そして逆に、主人公マーロウのなんとも探偵らしからぬ行動にがっかりすることもある。シャーロック・ホームズなどに見られるような頭脳明晰で冷静沈着な探偵像は、この小説には存在しません。この本の良さはストーリーよりも人物であったり、丁寧な日常の描写だったりといえるでしょう。危機的な状況にあっても丁寧にコーヒーを作る、このゆっくりとした時間を楽しんでください。
 さて、話の真相は…、長いお話し、回りくどい口調なので、私は途中で疲れてしまったのですが、(そういうときこそ速読が活きますね!)終わり方はとても気持ちが良いので頑張って読んでみてください。村上によるあとがきも面白いです。人間味のある探偵に、ぜひ感情移入してみてください。本を読んで一喜一憂してください、昔ヒーローに憧れたことを思い出すことができます。

(佐野インストラクター 2012年4月)


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