速読書評『読書の技法』

土居インストラクター書評『読書の技法』

読書の技法 (東洋経済新報社) 読書の技法 (東洋経済新報社)

佐藤 優 (著)
279ページ

月平均300冊、多い月は500冊以上。佐藤流「本の読み方」を初公開。
冒頭カラーページでは、著者の仕事場や本棚の中身、本やノートの書き込みの写真も掲載。著者の読書術を初めて完全体系化!

【読書の所要時間】 1回目10分(全体理解)/ 2回目35分(精読~熟読)

読書量は平均して月300冊、多い時で月に500冊以上だという…… キャッチコピーに思わず目が止まり、秘密をあばいてやろうといった気持ちで今回の「読書の技法」を手に取った。

 本書には著者の佐藤勝さんがどのようにして月平均300冊読書をしているのかが詳細に書かれている。
著者は速読教室で方法を学んだわけではなく、元外務省員としてロシアで勤務していた時に必然的に身につけた技法だという。元々著者のご両親が「本を良く読みなさい」という教育方針であったこと、学生時代に本に費やせる金銭的余裕があったことも大きく起因しているようだ。
 本書では「本の読み方」「どんな本を読むべきか」「いつ・どこで読むべきか」といった内容が詳細に述べられている。
 速読をマスターするために、目の動かし方などを指南する類の本ではない事も興味深いポイントの一つだ。

 今回はインストラクターらしく「本の読み方」の部分を是非ご紹介したい。著者は1冊を5分で読む「超速読」、30分で読む「ふつうの速読」そして3回繰り返し読む「熟読」を使い分ける事が重要だという。本書に書いてある内容からすると「超速読」に関しては「1ページを一目でとらえて読む」ようにしているとのこと。「飛ばし読み」が若干含まれているような気がするのだが…… しかしこの方の本書を読むだけでも伝わってくる膨大な知識量、そして読解力からすれば真実のようにも思えてくる。
 さてここで声を大にして伝えたいことはこれだ。「速読の目的とは…… 読まなくていい本を見つけて、そしてそれをはじく」確かにその通りなのである。かつて自分自身の人生が永遠にあるように思えていたあの頃、速読の「そ」の字も知らずに本を読んでいた学生時代、繰り返し読みたい本に出会ったことはかつて1度しかなかった。無駄というと語弊があるが…… それほど重要ではない本を読む事に人生の残り時間を費やしていた事を思うと後悔しか残らないものだ。

 さて、ここで一番読む価値があるのは「熟読の技法」だろう。著者は3回読むこと、プラス読書ノートを作成する(所要時間:読後の30分)ことで「本物の知識」を頭の中に定着させているというのだ。ここで大事なのは「本物の知識」とは何か? ということ。読書好きなら好きな本は何度も繰り返し読むことがあるだろう。反復することで自然に内容が記憶にも残りやすくなる。しかし、そこで終了してしまうと「どう」知っているのかを答えられる、自分の意見として使える知識にはまだ到達していないのだ。例えばテスト3日前に詰め込みで暗記するような読み方、これにいたっては論理をまったく無視をして単純に情報を脳内に短期間ストックしておくだけの作業のため、すぐに忘れてしまう。もちろん「本物の知識」になる事はありえない。

 本書に書いてあるようにやればいいんだろうということは何となく分かる…… ただ「読書ノートの作成」に対して中々実行に移せない人が多いのが現実ではないだろうか。30分あったら他の本を読みたいという速読上級者もいることだろう。だがこの技法は実際に「語学学習」の際とても役立っている。それが「フレーズ丸暗記」学習だ。英字新聞などに頻出するフレーズを対象に文中から抜出しノートをまとめる。どんな時にその表現が使われるか、それに対する返答(予想)フレーズも考えて記述しておく…。あまりにも書き留めたい表現が多いときは記事の切り抜きとクリッピングだけで終了するときも確かにあるのだが、あきらかに英単語と日本語訳を書いただけの単語帳よりは記憶に残るというものだ。

 上記のような作業は隙間時間にはなかなか実行しにくいので必然的に自宅で行うことになるが、単なる読書なら探せばどこでもできるものだ。ギリシャ語で「トポス」とは「場所」を意味するという。抽象的な意味ではなく「個性を結びつけた場所」のことを指す。大事なのは自分自身の「トポス」を見つけること、作ること。「トポス」があれば我々の読書に対する満足度はさらに充実することだろう。
(土居インストラクター 2012年11月)

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