1冊30分 読書感想文「図解雑学 記憶力」

30分で読破した後のレポート

受講生 田沢大地さんによる読書レポートです。
本を見るのは最初の30分のみ(速読)。その後、本を一切見ずに作成した感想文です。

『図解雑学 記憶力』 山元 大輔 著 227ページ

 本書では「記憶」とはなにか、最新の生理学研究を紹介しつつ、一般人にもわかりやすく説明している。本書は1つ1つののトピックを、それぞれ見開き1ページに簡潔にまとめている。全体を通しての感想を書くというよりは、個人的に興味深かったトピックを軽くまとめることにする。

●脳の機能局在  
 まず記憶とは主に体のどの部分が司っているかであるかだが、それは多くの人が想像するとおり、脳である。(本書には、単細胞生物であるゾウリムシも記憶をもつ、という気になるコラムもあったがここでは置いておこう。)では、脳はどのようにして記憶というものを扱っているのだろうか。 
 記憶には「意味記憶」、「エピソード記憶」、「手続き記憶」、「短期記憶」などといった様々な分類があり、こうした分類は脳と記憶の関係を探る上で大きなヒントとなる。脳機能局在論という学説をご存知だろうか。これは運動や視覚、言語などといった体の様々な機能を、それぞれ脳の特定の部分が担っているという考えである。この機能局在は、記憶という機能の中に置いても成り立つのだという。すなわち、端的にいえば「○○の記憶は脳のこの部分」、「△△の記憶は脳のあの部分」と、同じ「記憶」でも関与する脳の部位が異なるということだ。それを示す実例をいくつかみてみよう。 

・ある病気で側頭葉が萎縮した人は、エピソード記憶などは十分に覚えているのに、意味記憶だけ失われてしまった。 
・ある脳の手術を受けた患者は、特定の期間の記憶だけ消えてしまった。 
・脳のいろいろな部分に電極をとりつけ、一つ一つ刺激を与えてみると、ある部分を刺激したとき特定記憶がフラッシュバックする。 
・老人が、一概に「ボケる」といっても、その原因によっては全体的な記憶力ではなく特定の記憶力が低下する。

単に「記憶」というくくりだけで考えてしまいがちだが、記憶の種類によって脳の働きは異なることがわかるだろう。他にも、「机の上にリンゴがある」ことを記憶するとき、机という「どこにある」と、リンゴという「何がある」は脳の別々の部分に記憶される、といったことが挙げられていた。こうして、脳のどの部位が、その部位の中のどの神経・物質が、と突き詰めて行くことで、記憶の正体は明らかにされていく。(そして本書は、記憶の根源は最終的に遺伝子レベルにまで見出すことができるとする。) 
 話は逸れるが、3つめに挙げた電極刺激よる記憶のフラッシュバックの話は、ちょっと怖いがロマンのある話である。どうしても思い出せない遠い昔の記憶も、(無理矢理だが)フラッシュバックさせることができるのだ。しかし、電気刺激を与えられたときに自動的にある記憶が思い浮かぶというのは、一体どのような感じなのだろうか……。

●ニューロンの新生 
 脳を構成する細胞のうち、情報処理に直接関わるものは「ニューロン」である。細胞は日々分裂し生まれ変わるが、脳のニューロンは大人になってからは再生することはないとされていた。「大人になったら脳細胞がどんどん減って、物覚えが悪くなる。だから子供の今のうちに勉強しなさい。」と昔から言われてきたものだ。しかし最近の研究で、大人の脳においてもニューロンの新生が確認されたそうだ。年をとるにつれ記憶力は低下していく、という常識もいつか覆されるかもしれない。一方ラットを使った実験において、妊娠中の雌ラットにストレスを与え続けたところ、出生した子供のラットは一生を通じてニューロンの新生が妨げられることがわかっている。ストレスが次世代まで続くとは、なんとも恐ろしい話だ。

●個人的感想 
 今述べたラットの実験や、その他記憶を物質的な要因に還元する本書の説明をみていると、記憶力の良さとはやはり生まれ付きのものなのでは…… と感じてしまう。本書自身も、ある程度そういったことを認めているように感じる。 
 私は世間一般に高学歴とされる京都大学の学生であるので(なんとも鼻につく言い方で申し訳ないが、説明の都合上お許しいただきたい。)、「元から頭がいい」と思われがちである。実体験として友人たちに「君は『元から』頭が良いからいいね。私は馬鹿だから。」といったことを何度か言われてきた。しかし「(一部の天才を除いて)頭の良さなんて、みんな同じだ。問題は努力するかしないかだ。」という考えを持つ方が建設的であるし、私自身もそれに賛同しているので、「私は生まれ付き馬鹿だからどうしようもない。」などと言う友人には「そんな言い訳をして逃げてはいけない。」と言ってやりたくなったものだ。だが記憶が生理学的な現象である以上、(記憶力の良さと結び付きがちな)頭の良さが体格と同様に遺伝などに基づいた生得的なものであるとしても、何も不思議ではないかもしれない。将来「頭の良さは生れ付きです」なんて身も蓋もないことが科学的に証明されてしまったら、一体どうしようか。もちろん、本書でも紹介されているが記憶力を改善する手段やコツは無数にあるので、とりあえずはそれを実践するとしよう。 
 全くの余談であるが、この話は私に優生学という領域の再考をも投げかける。「人種的に劣っている、優れている」などといった考えは、現代では否定され誤った発想であるとされている。しかし科学技術の発展に伴い、人種の生物学的・遺伝的差異が証明されてしまうかもしれない。良識ある現代人は何事においても倫理や道徳が先行しがちだが、それによって科学的本質から目を逸らすことは望ましいことだろうか。しかしまあ、倫理的タブーを越えて何かを証明したくとも、それによって引き起こされる重大な社会的影響をケアする術を持たぬ限りは、本質を探らない方が賢明なのかもしれない。

☆速読に関して 
 本書の3章4章では、脳の仕組みを説明するため化学的、生物学的専門用語がふんだんに用いられているのだが、この部分を速読することは非常に困難であった。なぜならば、出てくる用語や概念を「知らない」からである。速読において、視野の広さや目を動かすスピードに加え、単語再認力が大きなポイントとなる。ある「既知の」単語を目にし、「この単語は知っているぞ。」と脳にあるイメージを瞬時に引き出す。この「脳の引き出しからイメージを引き出す」スピードを速め、それを絶え間なく繰り返すことでスムーズな速読が可能となる。しかし今回は、出てくる単語が「引き出しに入っていない」のだから、イメージの出しようがないのである。初めて出会う単語は、その場でイメージを作り上げるしかあるまい。これでは速読は不可能だ。ただ、私は高校時代生物を履修していたのだが、そこで学んだ用語がでてくるページに関してはスムーズに読み進めることができた。ひとえに、イメージがすでに引き出しにあるおかげである。 
 熟読しても理解するのに苦労する文章は、速読で理解することはできないだろう。 
(2,800文字)

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